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た総合的、計画的な取り組みが不可欠であった。
この基本となる新たな港湾環境政策として、1994年3月に「環境と共生する港湾」が、運輸省港湾局から発表された。
この政策においては、
?将来世代への豊かな港湾環境の継承
?自然環境との共生
?アメニティの創出
を基本理念に掲げた上で、
?自然にとけこみ、生物にやさしい港
?積極的に良好な自然環境を創造する港
?アメニティが高く、人々に潤いと安らぎを与える港
?環境に与える負荷が少なく、
環境管理のゆきとどいた港を、「環境共生港湾《エコポート》」の姿として、その形成を進めていくこととしている。

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Fig−1. Image of "Eco−Port"

2−2.「港湾環境計画」策定の提唱
この政策で基本施策の一つとして「港湾環境計画の策定」が掲げられた。港湾の環境の保全や、生態系・親水性・浄化機能などを積極的に活用した環境創造を、総合的・計画的に進めて行くために唱われたものである。
各港湾においては、目標年次における港湾の能力や施設の規模、配置などの港湾整備の基本的な事項を定めるマスタープランとして、港湾計画が策定されてきた。これに対し環境:施策や配慮を、総合的、計画的にとりまとめ、計画・設計・建設・利用の各段階での施策の実施上の指針とするため策定するものが、港湾環境計画である。
各港の港湾環境計画には、環境の現状と課題、環境保全・創造に対する基本方針や、整備・利用等の各々の段階で取る施策をまとめることとしている。この計画が公表されることにより、環境と共生する港湾の姿、港湾行政における環境への取り組み方針が広く周知され、このことで他分野の行政、市民、企業などの理解、協力が促され、環境に対する取り組みの促進、施策効果の一層の向上が図られることを企図するものである。

3. 大坂湾内港湾における環境保全・創造への取り組み

2の政策発表と前後し、大阪湾では、種々の環境共生港湾の実現にむけた取り組みが進んでいる。本章では、環境保全・創造に向けた取り組みの代表例を紹介する。
3−1. 堺泉北港湾北地区のモデル事業計画
環境共生港湾づくりのモデルとなる港湾として、現在全国6港に対し、運輸省よりモデル地区の指定がなされている。1995年に指定を受けた堺泉北港が、進めようとしている環境共生港湾の姿の概要を紹介する3)。
(1)堺泉北港堺北地区の置かれた状況
堺泉北港は、臨海工業地帯を始めとする産業・港湾施設でその大部分が占められている。大和川を挟んで大阪港と隣接する海域・陸域それぞれ6百haからなる北端の堺北地区は、
?産業の構造転換等に伴って広大な低未利用地が発生。
?水際線を産業・港湾施設に占められており、市民が立ち入れる親水性が不充分。
?COD75%値で3.9〜6.0mg/lと環境基準C類型の基準は満たすものの、水質の環境は不十分。
な状況にある。「海域と陸域の相互にわたる高質な環境と高次の港湾機能・都市機能が調和した多様能複合型のモデル都市」を目指している堺北地区を対象として、環境共生港湾を目指した計画が立案された。
(2)堺北地区の計画概要
計画では、「安全で美しく使いやすい機能的な港湾空間の形成」とする空間形成の基本方針に併せ、「市民のための交流・水辺空間の整備」、「海域及び地域の環境改善と環境創造」を港湾の環境整備の基本方針と設定した。
従来からの緑地整備に加え、
?生態系の保全と育成
?人工海浜・干潟等による水質の向上
?海の自然に触れる体験学習の場の形成
?環境に優しいモデルゾーンの形成
?水環境ネットワークの形成
?ウォーターフロントの特性を活かした景観形成
の展開を検討し、当面のモデル事業として、Fig−2の計画が立案されている。
この整備のイメージは次のとおり。
?海水の流れの活用や浚渫等により、水質を保全・改善し水域環境の再生、生物資源の保護・育成を進め、人々が海への慈しみを持つことができる空間の形成を図る。
?人工海浜・干潟等により、親しめる高質な空間の形成を図る。
?空間設計、景観、施設デザインなどで、人間の目線に立った美しさと自然へのやさしさを実感できる空間の形成を図る。
?水と緑の環境空間軸〜なぎさ海道〜によって、水環境;のネットワークを図る。

 

 

 

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